豆の上で眠る
主人公の今と過去を行ったり来たりしながら、少しずつ謎が紐解けていくストーリー…ではない。
謎は全く解けない。
過去に何があったのか?それをひたすらに突き詰めていくような、サスペンスドラマのような作りだと思った。
そして謎は解けず、疑問、疑念が最高潮に高まった終盤で、一気に謎の答えが解放される。
しかし、最後に一粒、一欠片残る根源的な謎。
謎ではなく、問い、の方が正しいか。
全体的には切なく、哀しい物語である。
しかし終盤の畳み掛けるような、濁流に身を任せるような異常なスピード感の中で、淡々と「出来事としての真実」が語られ、読後に改めて思う。この場合、正しいのは何だったか。誰だったか。この違和感とも言えぬ違和感の正体は…。
それがタイトルとあまりにしっくりくるため、本来の意図と違うところでそう思っているのかもしれないが、私はとても楽しめたわけである。