細かいこと抜きで小説が好きな私へ

私の読んだ本について、思ったことや感想を綴る備忘録です。ネタバレは極力避けますが、万が一の時は悪しからずご了承下さいませ。

僕は君を殺せない

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 最近よく見る一人称トリックの話。

 

ひとつひとつの描写は綺麗で丁寧です。

 

はっきり言って帯が煽りすぎ。(これも定番化しつつあるな…)普通に読めば面白い話。

 

少し強引な部分もあるが、話の短さを考えれば仕方ないと言うかよくあることかと。

 

あと、短編集だということを注意。

ぱっと見わからない。

ただ、話はどれも、面白い。

 

 

託すことの勇気、託されることの悲哀。

 

夜の国のクーパー

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 おとぎ話のような話。

ガリバー旅行記や、イソップ童話を思い出す。

好き嫌いはあるだろう。

子供に読み聞かせるのも難儀だ。

 

ただわたしは嫌いではない。

 

普通の小説に飽きたり疲れたりしたときは、

手にとってみてはどうだろうか。

 

誰にでも夜の国はある。

終末のフール

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終末好きのわたしにとって、

この小説はなんと魅力的なタイトルか。

 

そして開けば、

ハライチ的なアレ。

 

全体像はあるけど、ひとつの壮大なストーリーに沿って物語が進むわけではない。

ひとつひとつの小さな物語が、水面に落ちる波紋のように、ぶつかりながら大きくなっていく…わけでもない。

微かに端が触れ合うだけで、それぞれが揺らす水面は限定的だ。

 

それが良い。俯瞰してみているこちらからは、

それが静かで嫋やかで、微笑ましいのだ。

それが終末の世界だから尚更に映える。

 

できることをやる。

今できることを。

 

明日が無かろうが関係なく。

 

あと、どのくらい生きる生き方か?

 

考えさせられる物語だった。

 

 

 

明日失われてもいい生き方を。

その時までサヨナラ

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山田さんのホラーが大好きである。

その手のものは備忘録する必要もないので、

あえてホラーじゃない山田作品から。

 

父と子、そして母の愛、絆の物語。

 

私的には完全に忘れて帯が煽りすぎで、

感涙必至とかそんな内容ではなかった。

ただ微笑ましく、ジワッと感じるのは確か。

 

しかし最近どんでん返しをよく見ていたせいか

夢オチ的な展開は見飽きていて、

(当作品は夢オチではないが)

あまりネタバレしたくないので書かないが、

話の構成はやっぱり少し違和感を感じてしまったかな。というか直近で見た誉田作品とかぶ…

 

まぁなんにしろ私は山田さんが好きだ。

だからいっそのことこれもホラー化を。

という作品でもないんだよなぁ。

 

煽りであるように、確かにこの作品は

父親

が見ると感慨深く読み応えがあるに違いない。

 

 

自分を変えるということは、簡単ではない。

ヒトリシズカ

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ひとりの女性に嵌らせられる作品。

ミステリアスな構成に引き込まれる。

 

何と言ってもタイトル通り、

シズカというひとりの女性の魅力。

 

ラストは切なく、哀しい。

 

あまり背景というか、

心情を語る部分が少ないので、

多少の狂気感はあるが、

それよりもやはり魅力が勝る。

 

 

 

何故生き、何故死ぬのかは、

自分で決められる。

 

記憶屋

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うーん。良い話。なのだけど。

 

私は感動できなかった。

 

学生の頃に読んでいたら、

もう少し違ったかも。

 

しかしこの小説。続編が二つ三つと出ている。

だからきっと人気が高いのだ。

物語性が強いのかな。

アニメ化とか、できそう。

 

記憶が残る幸せ、失われる幸せ。

 

人は忘れることができる。

その意味を噛み締める。

爪と目

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淡々と、ただ静かに冷静に客観的に、

感情のまるでないような語り口で綴られる、

わたしとあなたの話。

 

なるほどこれがホラーとは、

読後にはとても納得のいく話だ。

 

子供は、感情豊かな生き物である。

だから、感情の感じられない子供は、どこか怖い。そのホラー感は、独特なものだ。

幽霊の子供だって、感情豊かな様が多い。

無邪気に人を騙したり、怖がらせたり。

感情の感じられない子供は、そういう怖さとは全く異質だ。

 

もちろんこの作品はそれだけでなく、

大人の女性の怖さがあらわされている。

そしてこちらも、異質だ。

感情は感じられる。

しかし、

他人への感情が感じられないという感情を、だ。

 

無関心と、無関係は決定的に異なる。

 

関心はあれど、それは自分に向けられる関心を求めるのとは全く違うものだと考えさせられる。

 

しかしやはり際立つのは子供の怖さの方だ。

読後はこちらが勝るのだ。

それがまた怖いのである。